裂き織り工房 加藤 本文へジャンプ
裂き織りへの思い

私が裂き織りをするようになって30年近くになります。

蔵の中で、すすけた古い織り機や道具、大量の木綿糸や絹糸、まゆ玉や麻などを見つけたときは驚きでした。
先祖が養蚕をやっていたのは聞いていましたが、織りもやっていたことをその時、初めて知りました。
それが裂き織りとの出会いでした。

裂き織りは奥が深く、学んでも学んでも、「これで終わり」にはなりません。

技術的なことををマスターしても、縦糸を経てるたび、織りをするたびに、驚きと感動の繰り返しです。
布だったときの模様が、裂いて織ってみると予想とまったく違った模様になっていたり、無地のつもりが織ってみたら思わぬ模様が入っていたり。飽きるということがないのです。
そして、使用する木綿布や絹布、時にはシナ、チョマ、麻などは自然素材ですから、触っていても気持ちいい。心がなごみ、癒されます。

キャンバスに絵を描くのと同じで、何もない縦糸に一段ごとに色を入れていくのは芸術にもつながります。
織りながら、ワクワクしたりドキドキしたり。時には、無心で。
世界にたったひとつの私の作品。いとおしく、とても嬉しくて。

蔵にあった糸巻きやザグリ、そのほかの道具を、今も使いながら、時を超えて先祖とつながる不思議な縁。

布との一期一会に胸ときめかせ、裂き織りをしながら幸せを感じるこの頃。
私を理解してくれて支えてくれている家族や友人知人、すべての皆さまに、心から感謝しています。